【1】おかしな出逢い

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 後ろめたい気持ちを引きずりながら踵を返したとき、ポツ、と冷たいものが頬に触れた。 (え、雨?)  さっきまでそこそこ晴れていたのに、見上げた空はいつのまにか薄暗くなっていた。 地面もポツポツと少しずつ色が変わり始めている。  勇士郎は東屋を振り返った。当然屋根はあるが、彼の身体はほとんど外に投げ出されているし、倒れた自転車や荷物も同様だ。  勇士郎はしばしその光景を見つめたあと、重い溜め息をつき、再び踵を返した。  目を閉じている栗原にそっと近づき、肩を軽く揺さぶる。 「ちょっと、あんた、……栗原さん」  触れた肩は厚みがあったが、それだけに痩せた身体がなんだか不憫に思われた。 「……ん、」  ちいさく唸って、栗原がぼんやりと目を開いた。 「大丈夫か、ちょっと」  緩慢な動きで首を巡らせ、栗原が勇士郎の方を向く。 「――あれ、……高島さん」 「高岡や。何してんの、こんなとこで」  会うのは二度目だが、この異常事態に際して、早くも敬語は崩れ去っていた。 「あ…、え、っと。…すみません、俺」  まだぼんやりとしているようで、片手で目を覆いながら栗原は軽く頭を振った。 「無事退院したんとちゃうの、なんで家に帰らへんの?」 「あ、」 「ん?」 「……関西のひとなんですね」 「うん、まあ、そうやけど、その話今いらんやろ。とにかく雨降ってきたから、屋根の下入り」 「あ、はい」 「立てるか?」 「大丈夫です」
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