第六章 ロマンスの入口

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「見てごらん。これが殺された男の姿に見える?」 ルイは、口元を押さえてクスクスと笑っている。 男の姿を改めて見て、私は驚愕に目を丸くした。 口から泡を吹いて倒れている男は、グゥグゥと豪快なイビキを響かせている。 「...なんで?...どうして?...さっき、確かにピストルで...銃声だってしたのにっ!!」 「ピストルってこれのこと?」 ルイは私の手の上に黒い塊を乗せた。 ひんやりとして冷たいけど、ビックリするほど軽い。 「アルミで出来たタダの水鉄砲だよ。引き金を引いてごらん。」 まだ少し怖かったけど、ルイに言われた通り引き金を引くと、先ほど聞いた銃声が流れた。 「リアルだろう?って言っても、僕も映画とかドラマでしか聞いたことないから、なんとも言えないんだけどね。僕はただ、これに水じゃなくて睡眠薬を入れ込んで、彼に飲ませてあげただけだよ。まぁ、僕の迫真の演技のせいで、最後には気を失っちゃったみたいだけどね!」
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