第六章 ロマンスの入口

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「大丈夫だよ。」 仮面を外したルイが、私の四肢の拘束を解いていく。 私に掛けてくれたその声はとても優しいのに、今はそれが恐ろしい。 恐ろしいと思ってしまうことが、とても申し訳なくて、悲しい...。 あなたに人の命を奪わせてしまった自分という存在が、悲しい。 「大丈夫だよ。セレナ。」 ルイは自由になった私の手を取って、起き上がらせてくれた。 でも、倒れている男の姿がハッキリ見えて、私は咄嗟にルイの手を振り払ってしまった。 「怖かったよな。...本当にごめん。...だけど、本当に大丈夫だから。僕は人殺しなんかしていないよ。」 離れた私を引き寄せて、その胸に抱きながら、彼は優しく微笑んで、倒れている男を指さした。
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