季節外れの嵐

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「ちょ、ちょっと緒方さん」 私は緒方さんの手を離し、壁と彼の腕の間からすり抜けた。 「しっかりしてください! 私は人事に駆けこんだりしませんから。緒方さんだって酔って絡みたくなる時だってありますよ。ね? 私、いちいちこんなことで騒いだりしませんし、どうしたんですか、急に投げやりになって」 「どうしちまったんだろなぁ……」 緒方さんは他人事のように言うと、自嘲気味に笑った。 「波多野に甘えたいって言ったのは嘘じゃねえよ。ちょっとは変な意味もあったけど、その変な意味がなくても、お前はホント、俺でも頼りにしちまうくらい大人っていうか、ちゃんとしてるよ」 「そんなことありませんよ。全然大人なんかじゃないし、ちゃんともしてません。さ、今日はもう寝ましょう」 私は彼を促して廊下を歩き出した。 そして、部屋に着くまでに明日の朝、朝食のあとにロビーで待ち合わせることを決め、先に彼を部屋に送り届けて私も自分の部屋へ入った。
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