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突然のことに身体が強張る。
こんなに至近距離で緒方さんに見つめられるのは初めてだった。
「俺なあ……今、なんかすげえ波多野に甘えたいんだよ」
「え……」
動物的な本能とても言うのか、後ろには壁が迫っているのに足は後ずさろうとする。背中では動くはずもないなのにめいっぱい壁を押している。
「な? ヤベエだろ?」
緒方さんは笑っているが、冗談交じりに笑顔を返そうとする私は頬が強張る。
「じょ、冗談言えてるくらいですから、大丈夫です。緒方さんホント、飲みすぎです」
緒方さんとの距離を保つために、両手で小さな壁を作ると、彼はその壁を片手で掴み、うなだれながらため息をついた。
「マジで飲みすぎだよな。……最低だよな、こんな上司。酔って絡んでセクハラ、パワハラ。波多野が人事に駆け込んだら終わりだよな? もういっそのことそこまでなって堕ちるとこまで堕ちるか」
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