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1 負の連鎖
未波は、買ってきた小さなポトスをチェストの上に置いて、
細く息をついた。
秋めいてきた日差しが照らす部屋の中で、
未波は、まだ小振りな緑の葉をそっと指先でなぞる。
それに応えるように、微かに揺れる葉を目に
彼女は再び淡く息を突いた。
あぁーあ、二つになっちゃった……。
一つ目のポトスをこの部屋に迎えたのは、今から4年前。
きっかけは、大学時代から付き合っていた元孝から別れを告げられたこと。
「たった、2年だよ。
その間に、俺、一生懸命がんばって一人前になる。
そしたら、もっと未来の俺たちの事を考えよう」
それは、互いに就職先の研修を終えた頃。
こんな言葉を残し、彼は赴任先の名古屋に旅立った。
だが、それから3ヶ月後。
「ごめん。俺、別に好きな人が出来たんだ」
顔も見えない、一本の電話。
それだけで、彼女たちの3年余りが終わりを告げた。
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