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「分かった。私も今から病院に向かう。
面会は出来なかったとしても様子くらいは分かるだろうし」
「うん」
千波との電話を切った私は、動揺を落ちつけようと深呼吸をしてから支度を始めた。
ついさっきまでは、誉さんとあんなにも幸せな気持ちで過ごした部屋とは思えない重苦しい空気を感じているのは、心の片隅に私なりに導いた答えがあるからだ。
木嶋屋の火事はきっと失火などではない。
そして私が思っているよりもずっと。
この一連の出来事の裏側は複雑な思いが隠されているのかもしれない。
支度を終え部屋を出ると、駐車場にはもう誉さんの車はなかった。
きっと彼も慌ただしく支度を済ませ出勤したのだろう。
私の誕生日を3日後に控えたこの朝。
22年前の事件によって、悪戯に引き寄せられた5人の人生は大きく変わり始める───。
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