Act.9 Side H

34/34
175人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
何か胸騒ぎがしてたまらない。 いくら証拠不十分で起訴されなかったとはいえ、俺の父親は本当にこの事件に関わっていなかったのだろうか。 今思えば、東京からこの街に引っ越したのも、ある日突然のことだった。 母親は「お父さんの仕事の関係と、東京よりは空気がいいから心臓にも負担がないかなと思って」と俺に説明していた。 しかしあの事件の後……。 父親が不起訴になってすぐに、俺達家族はあの街から追放されたんだと思う。 まだガキだった俺にはそれを知る術はなかったけれど、何か大きな力が裏で働いていた気がしてならなかった。 「俺は……肝心なことを見落としているかもしれないな……」 ひとり呟いて思い浮かんだ縮図をノートに書きとめる俺は、確実に22年前の真実へと近づいていた───。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!