エピローグ

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 大学の広い体育館の中、ラテンの賑やかな音楽とともに、それぞれの選手を応援する声が響く。  酒田とともに体育館の中をゆっくり歩きながら、会場の中を見渡す。  各大学ごとに集まった応援席の中、酒田の大学は、ちょうど反対側あたりに固まっているのが見えた。 「先月の大会は安藤たち出られなかったけど、今回の大会は安藤たちの優勝ですよ」  大きな声で言う酒田に、俺は周囲の痛い視線を感じる。  そりゃそうだ。自分たちも練習をしてこの場に来ているというのに、そんなことを言われたらイラっとするだろう。  特に安藤くんは、大学の競技ダンスの世界では、それなりに有名人なのだ。 「あ、安藤たち、そろそろ行くのかな」  酒田の声に、俺はハッとする。髪をかっちり固めて颯爽と集合場所へと走っていく後ろ姿を目で追いかける。  彼の後を逢坂さんも追いかけてたはずだけど、俺の視野には安藤くんしか見えなかった。
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