ざぶん

2/8
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
『実は……ずっと好きだった』  イマドキの告白といえばそうだね、でもこれがイマドキ当たり前なのだろう。  高校生になって、初めて持ったスマホ。初めてID交換したのは憧れの先輩で、初めてのメッセージがそれだった。  使いこなせていない私は、慌てて手から滑り落ちそうになるスマホを、なんとか握りしめ、必死に考えて返事を送った。 『実は私も好きでした、なんて』  中学の時から憧れだった先輩は、みんなの人気者であり、アイドルのようで、地味な私は声をかけることすら許されなくて、いつも教室から見つめるばかりだった。  けれどせめてもう少し、傍に居られたら、そう思って同じ高校に進学し、必死に女を磨いていた。 『なんて? 俺は本気なんだけどな』  自室のベッドの上で、ゴロンゴロン寝返りを打ちまくり、何度も読み返し、返事を書いては消してを繰り返す。  まさかまさかの大好きな先輩からの告白、真に受けていいのか、冗談はよしこさん~、なんて返しておくべきなのか、かれこれ十分。時計の針が、夜の九時を知らせる。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!