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石板
「貴殿に一つ、頼み事をしたい」
目の前にいる人物は、厳かな声でそう言った。
腕は筋肉で丸太のように太く、恰幅のよい男性。 豪奢な衣服を身に纏い、黄金の煌びやかな装飾を施された椅子に、どっしりと腰を預けている。
「私奴に頼み事など…… 私にできることならば、何なりと御申し付けください、オグド皇帝陛下」
私は跪き、畏敬の念を示す。
「貴殿も知っておるだろうが、先日、この国で遺跡が見つかった。その遺跡に先達した調査団が、奇妙な文字が刻まれた石板を発見したのだ。その解読を貴殿に依頼したい」
私は少しだけ考えて、面を上げる。
「了解いたしました。必ずや、その石板の文字を解読いたしましょう」
皇帝陛下は、満足したように頷く。そして、私は謁見の間を後にした。
私はトト。この地の歴史や文明を研究する考古学者だ。今は自室にこもり、奇妙な文字が刻まれた石板を前にして頭をひねっているところだ。
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