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重い知らせ
「清一郎さんは、いつ亡くなられてもおかしくない状態です」
医者から放たれた言葉に、武彦さんは息を呑み、唇をわなわなと震わせた。
「そんな……」
顔から血の気が引いていき、椅子から崩れ落ちてしまいそうな武彦さんを、私は直視することができなかった。
俯いた私の傍らで、医師はさらに言葉をつなぐ。
「ただし、これはもちろん何もしなかった場合です。清一郎さんは著しく呼吸機能が低下しているため、現在は酸素マスクを着用していただいています」
「もし、酸素マスクを外したら……」
今にも消え入りそうな声で、武彦さんは医師に問うた。
医師はゆっくりと唇をなめ、すっ、と息を吸い込んだ。
「マスクを外してすぐに亡くなられるというわけではありません。ですが、余命が短くなってしまう可能性は非常に高いと言えるでしょう」
武彦さんは、何も言わなかった。
彼の身体が、とても小さく見えた。
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