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幼稚園の頃にはもう一緒に遊んでいた記憶がある、東吾とは幼稚園も小学校も違うのに、私は同じ年の女の子とは遊ばずに東吾とばかりいた。
ある日、テレビでやっていた映画の結婚式のシーン、それをたまたまお互い見ていて、それが素敵で二人でよくそのシーンを再現していた。
「僕は一生、亜弥を愛し続けると誓います!」
そんな言葉に、私は満足気に微笑む。
「東吾、大好き!」
この時の『好き』は、友達の延長だった。
「俺も亜弥、好き! 違う、ちゃんとセリフあったろ!」
なんだかそんなしょうもない遊びを飽きもせずやっていた。
何度も繰り返すうちに、東吾は部屋で拾ったというキーホルダーなどで使われるダブルリングを持ってきた。
「これ、指輪の代わり!」
「うん!」
子供の浅はかさだ。
指輪の交換のシーンで少しリアリティを求めていたのだろう、東吾は私の左手を取って、薬指にそれを嵌めた。
ん、きついな、とは思った。
東吾も思ったんだろう、私の手をぎゅっと握って、力を込めてダブルリングを押し込んだ。
それはきちんと指の付け根まで入った。
その瞬間は、喜びが込み上げてきた。
だって、本当に指輪みたいで。
幼馴染の東吾がくれたもので。
映画の真似事とは言え、結婚式をしていて。
「──東吾」
「うん」
「なんか、すごい嬉しい……!」
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