原案

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原案

目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。 自分がどうしてここにいるのか一瞬戸惑うが、すぐに何故なのかを思い出す。 「またこの場面かよ」 一人ボヤく東山は、この屋外階段から落ちて死んでから、毎日毎日繰り返される「死の瞬間」に飽き飽きしていた。 自分が何故、成仏も出来ず、霊になっても死んだ場面を繰り返すのかを調べた結果、自分が事故死や他殺ではなく、自殺者扱いされていることを知った彼は、どうすれば、この汚名を晴らせるのか考えているところに、ある日、珍客が訪れる。 霊になってから今まで、誰一人として自分の存在に気が付く者はいなかったのだが、目の前に現れた、自分とは真逆のタイプの人間と目が合った。 それが西谷との出会いだった。 チャラくて不良っぽい彼に助けを乞うのは、秀才としてのプライドが許さず、最初は「とり憑くぞ」と脅して、自分の手助けをさせようとするが、 「僕は自殺じゃない」 「北里に呼び出され、彼女を待っている間に何者かに突き落とされた」 という話を、「学校一の美少女が、こんなガリ勉を呼び出すなんてあるわけないだろ」と笑うことなく、真剣に話を聞いてくれた西谷に少しずつ心を開いていく。 東山の死の直前、普段と違うことがあったと言えば、「北里からの呼び出し」と、進路のことで担任の南野先生と口論になったことぐらいしかない。 この二人が自分の死の真相を知っている筈だと睨んでいた東山は、西谷に二人について探ってくれるように頼む。 勉強はできないが、交友関係の広い西谷が得て来る情報と、自らの頭脳によって、その情報から真相を推理していく東山。 最初は口喧嘩をしつつも、先輩後輩、そして、霊と人という垣根をこえて友情が芽生えるのだが、真相が判明することは、東山が成仏するということ。 すなわち、二人の永遠の別れが近付くということであった。
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