わんだふるライフ

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わんだふるライフ

【another side】 整えられた髪型、服装、笑顔、飾られた香水、時計、ネクタイ。それら全てが彼の魅力を引き出し、全てを身にまとった彼はあたかもそれは自分に似合うと豪語して憚らない自信に溢れているように見える。 それが彼に対する私の印象で、それが覆った事は一度もない。 モテる。そんな事は誰に言われなくてもわかっていたし、何らかの集まりに彼が現れれば既婚・相手の有無に関わらず女性は彼を視界に入れたし、一度だけの特別になりたいと思った女性も数えきれない程いるだろう。 実際にその中からタイミングとお眼鏡に叶った相手は一度から数度の逢瀬を楽しんだという話も聞いた事があるし、中には時期は未定だが彼の特別になった人もいると言う。 日本人でありながら日本人離れした華やかな容姿に、旺盛なリップサービス。語学も堪能で、話題も豊富。 決して軽いプレイボーイだけだと言われないだけの知性も兼ね備えた彼は、こうして私が見つめている視線を気付いているのかいないのか、時折にっこりと微笑む。この笑みはあなただけに向けたものですよ。そう錯覚させる程に。 「今日の功労者はこちらでしたか。お1人ですか?」 「ええ、少し飲みたくて。本日はお越しいただきありがとうございました」 「こちらこそお招きいただきありがとうございました。もう1人の功労者はもうお帰りになってしまいましたか?」 賑わいを見せたパーティからは打って変わって、静かなジャズの音楽が聞こえてくるだけの小さな空間でも彼は変わらず華やかで美しく、1人飲んでいた私に向かって今回の主賓を気遣うような言葉を投げかけてくる。 それに対してその話はいいからあなたの話が聞きたいと暗に匂わせるようにカクテルグラスを軽く持ち上げれば、向こうもそれを察してくれたのか苦笑しつつ隣のカウンターに座り、慣れた様子でアルコールを頼む。
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