完璧男子に類なし sweet emission

1/23
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

完璧男子に類なし sweet emission

「あ・・・花火」 瀬戸がぽつりとつぶやいた。 夜空を見上げながら、目の前のビールに口をつける。 「そういや花火大会だっけ?今日」 「そうみたい。綺麗だね」 花火を見ながらうっとりする瀬戸を見ながら、 俺も目の前のビールを飲んだ。 この間、瀬戸が狂ったように買いまくったビールが余っている。 ということで今日、瀬戸の家で全部飲んでしまおうということになった。 お互いにこのビールで3缶目。 俺は酒に弱くないから、ほろ酔い程度だが・・・ 「瀬戸」 「なぁに?」 おそらく、いや確実に、瀬戸は酔っ払っていた。 まず声がおかしい。 そして、俺を見る目がとろんとしている。 「大丈夫か?」 「うん、大丈夫」 明らかに大丈夫ではない。 「大丈夫」の言い方が、まるで女が甘えるようだ。 だからちょっと、意地悪をしたくなった。 「花火、綺麗だな」 「うん。すごく」 「ここ5階だっけ?下の景色もなかなかだぞ。見てみろよ」 「・・・・・・」 赤い顔で睨まれる。 瀬戸は昔と変わらず、高いところが苦手なようだ。 「・・・橘の、イジワル」 拗ねたように言って、もう一度缶ビールに口をつける瀬戸。 その挑発とも取れる表情に、 感情が揺さぶられた。     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!