完璧男子に類なし sweet emission

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酔っているせいか、すぐに鼓動が早くなる。 手が動きそうになって、慌てて抑止した。 今日はそんなつもりはない。 ただ、花火を見るだけだ。 ただ、ビールを飲むだけだ。 そういう、まったりとした日があってもいいはずだ。 ・・・ん? 気がつくと、瀬戸は4本目の缶を持っている。 「おい瀬戸」 「なに?」 「飲めんのか?それ」 「・・・飲めりゅ」 絶対無理だろ。 つーかなんだ、飲めりゅって。 「だめだ。この酔っ払いが。よこせ!」 「やだ、いーやーだー!」 缶を掴もうと手を伸ばすと、瀬戸がさらに手を伸ばす。 大の大人が缶の取りあいだ。 「いいからよこせ!くっ、このっ!」 「うわ、ちょ、やめ・・・」 「よし!―――っっ」 缶の奪取に成功した。 が、その勢いは止まらず・・・ 俺はガラスにぶつかってしまった。 幸い、頑丈なガラスらしく割れはしなかったが、 俺はその場に蹲った。 「・・・っ、てぇ・・・」 「橘」 上から瀬戸の声がする。 俺を心配そうに見下ろしていた。 「ご、ごめん・・・」 「・・・いい、別に。強くぶつかったわけじゃねぇから」 そう言って、顔を上げたのがまずかった。 ・・・すぐ近くに、瀬戸の顔があったから。 一瞬心を奪われそうになって、すぐに理性を取り戻す。     
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