はつこい白書

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はつこい白書

一 駅前は開発が進み一階はショッピングモール三階から五階までは企業、それより上は分譲住宅という30階建てのビル。 そんな建物が多く建ち並ぶ近代化された街並み、そこから徒歩五分ほどの場所にある五階建てのビルの一室に、月岡萌(つきおかもえ)は居た。 元々色素が薄く染めていないのに、窓からの太陽の光で茶色に輝いている髪は艶があり美しい。 美容院になど半年に一度行ければいい方だが、肩に付かない程度のボブで、内側に毛先がクルリと巻かれたような癖っ毛によるカールが萌を可愛らしく見せていた。 化粧っ気のない顔は、ファンデーションを塗っていなくても白く瑞々しく、丸く大きな瞳が印象的だ。 どこにでもあるファストファッションブランドに身を包んではいたが、真新しく洋服には毛玉などは一つも付いていない。 百坪はありそうな広い土地に一戸建てが建つ高級住宅街の中、萌が居るのは五十坪程のそう広くはない土地に建つビルではあるが置かれた家具一つとっても高級感のあるものが多かった。     
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