yagami 1

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 また、同じ利用者が八神の前に並んでいる。本当に偶然だとは言えないくらい、彼は決まって八神の前に並ぶ。その際だった容姿のせいで記憶に残りやすいのかもしれないが、そうでなくてもこんな風にほぼ毎日ここに訪れ、八神の前に並んでいたら、否が応でも気になってしまうというものだ。  彼は一か月ぐらい前から、毎日図書館に顔を出している。一日で読み終えてしまうのか、毎日一冊。多い時は今日みたいに三冊程度本を借りて行く。名前も覚えてしまった。彼の名前は『暮野 來(くれの らい)』学生にも見えなくはないが、平日のこの時間に毎日図書館にいる学生、もしくは社会人などいるわけがない。だとしたらただの無職。もしくは超お金持ちの暇潰しとか……。  しかし、良く考えると不審者レベルの利用者なのだが、彼は明らかに他の人間達とは違うオーラを放出している。彼の周りだけワントーン明るいように八神には見えるし、輝いているという言葉が本当にぴったりな男なのだ。だから、周囲の人間達は、好奇心を抑えることができず、彼をちらちらと密かに観察しているのが、カウンターからだと良く分かる。  だんだんと順番が近づいて来ると変にドキドキしてくるから不思議だ。事務的な会話しかしたことのない相手に、自分は何を意識しているのだろうか。     
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