4 「キスは二度目のデートで」とか言うやつの気が知れない

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漆崎はうつむき加減のまま、一向に俺たちと目を合わせようとしなかった。 そして 「私…やっぱり諦めます。先輩のこと」 「え!?なんで!?」 彼女の言葉に、優奈がいち早く反応する。 かく言う俺の方は、その言葉に動揺してしまって、何も反応ができなかった。 「それは…」 言い淀むように、視線を横に逸らせる漆崎。それはどことなく当たり障りのない返答を返そうと、必死に頭の中で言葉を組み立てているように見えて仕方がなかった。 「やっぱり、私にはこういうの合ってないっていうか…。この前だって何もできなかったですし…」 絞り出すようにして出てきた返答はこれだった。俺の脳内では、自然とあの模擬デートのときのことが思い出される。 「努力したって、やっぱりダメなものもあるんですよ…。だから…」 「それはよくないわ」 沈黙を続けていた白河が、ここでようやく口を挟んだ。 凛とした表情で、背筋を伸ばし漆崎の方にまっすぐに視線を向ける。 しかし、俺は思った。 もしかしたら、この白河の表情は、漆崎にとって「重荷」になってしまうかもしれない、と。
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