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お次は二組の仁科。プラモづくりが趣味の手先が器用なやつだ。
「生憎、門外漢だ」
同い年とは思えない渋い表情と口調で、指をわきわき動かしほぐす仁科。なんだそれは。なにアピールだ。
「謙遜するな。お前の腕は知っている。以前作品を見せてもらったとき、そっち方面に明るくない俺でも痺れたほどだ。神レベルの塗装。その才能があれば間違いない」
真ん中分けの前髪の間、仁科のげじげじ眉がひくりと痙攣。
「……数日くれ」
渋いセリフで去っていく背中を「何者だよ!」と心で叫んで見送った三日後、約束どおり仁科は俺たちの前に現れた。通販で入手した道具と、動画投稿サイトで習得したヘアメイク技術を携えて。
「これが私……?」
鏡を前に市原がベタなリアクションをかます。だが、そうしてしまうのも納得の出来栄えだ。埴輪が人間に。それもかなりの上玉へとメタモルフォーゼしたのだから。
「さすがだな」
肩を叩いてねぎらうと、仁科は満更でもないように口の端を上げる。
「よせ。自分の仕事をしただけだ」
だから何者だよ! と心で叫びつつ、俺は成功の手応えを感じていた。
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