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そこで僕は自分の寝床の傍の目覚ましを見る。青色に縁どられたそれだが、リゼルのベッドにある物も時間は同じなのを確認する。
目覚ましをいつも、ぎりぎり遅刻しないくらいの時間にセットしているリゼル。
だから僕は毎朝目覚ましが鳴る前に、リゼルを起こすのが日課になっていたりする。
なので僕は、ベッドの梯子を下りて、気持ち良さそうに幼子の様なあどけなさの残るリゼルの寝顔を見ながら肩をゆする。
「リゼル、もう朝だよ。遅刻しちゃうよ」
「う……んん。後五分……」
「そう言って、リゼルはまた寝ちゃうじゃないか。起きる!」
僕はリゼルを再び揺さぶるとそこで、ようやく寝ぼけた様な眼差しの蒼い瞳を開く。
まるで空みたいだ、といつも思う青い瞳。
でも昔よりも空虚に見える瞳。昔はもっと元気ではつらつとしていて、よく喧嘩をしたりもしたのに、今は気だるげでやる気がない。
“あの時”以来ずっとそうだ。
そう思っているとそんな僕にぎゅっとリゼルが抱きついてくる。
これも“あの時”以来ずっとそうだ。
会うたびに、そして今は同じ寮の部屋なので、こうやって朝起こすたびに抱きついてくる。
甘える様に、まるで僕の存在を確かめる様に。
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