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「レオナは本当に、何も、分かっていないんだな」
「な、何だその言い草!」
「もういい。俺は強くなる。レオナを守れないなら意味はないし、レオナの助けなんていらないくらいに強くなってやる」
「ぼ、僕だって、リゼルにレオナがいてくれなくちゃ嫌だって言わせるくらい魔法を強くなってやる!」
「……俺はレオナがいなくなるのが嫌なんだ。だから強くなりたくなかったけれど、レオナがそのつもりなら、レオナの力なんていらないくらい強くなって守ってやる」
何かを決意したようにリゼルは言う。
でも僕は、僕の今までの努力がすべて否定されたように感じてしまう。
だって僕は、ずっと、リゼルと一緒に居たくて、隣に居たくて……。
さすがは勇者だ、幼馴染だとほめる声がどこか遠い。
そこでリゼルが僕に背を向けてどこかに行こうとする。
「リゼル、どこに……」
「ついてくるな」
拒絶の言葉が、リゼルから吐かれる。
いつも懐いていたリゼルの言葉に僕は衝撃を受けて、何も言えなくなってしまう、追う事すらできない。
そんな僕の前からリゼルが、一瞬振り返ろうとしながらも、振り返ることなくその場を走り去ってしまったのだった。
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