碧落の愛

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 そうやって、僕と彼女は結婚した。  結婚をしたあとも彼女は絵川誠一のことを忘れたわけではなかったし、それは僕も同じだった。ふたりとも彼のことを口に出すことはなかったけれど、いつも心の奥には絵川誠一の存在があった。  それでも僕は彼女を愛した。ときどき彼女が夢をみて寝言で彼の名前を口にする以外は、僕たちは完璧な夫婦だった。  そう、今朝までは……  彼女は僕に目玉焼きを作った。それは、これまでお互いが保ってきたバランスが崩れた瞬間だった。  僕は仕事をしている間も、彼女がどんな気持ちでいるのかを考えると不安でいっぱいになった。
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