仙人掌

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仙人掌

 お前を抱くと、目が(くら)む。  そのうなじに顔をうずめ、お前の匂いを肺一杯に吸い込んで、細い腰を抱き寄せて両腕で(しば)る。  そうすると脳が甘く(しび)れるような感覚に襲われて洪水のように神経を持っていかれてしまう。頭のてっぺんから爪先まで、ぴしりと熱が行き渡って()たされて、俺はその怒濤(どとう)恍惚(こうこつ)とする。  ――その次に襲ってくるのが日照(ひで)りのような猛烈な暑さ。  ()からびていくようにじりじりと(さいな)まれ、喉がからからに渇く。俺はもう一度、ぬるい濁流に飲み込まれて沈み落ちてしまいたくて、お前の頬に鼻面(はなづら)を擦り寄せる。  だけど細い身体を()き抱いても()き抱いても満たされることはなく、母にすがる赤子のように、ただその背をまさぐって必死にしがみつくだけ。
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