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平日だったが、俺は仕事を休み、祐希と里緒も母の側に居たいというので学校に欠席の連絡を入れた。
三人で手術室へ入って行く美雪を見送り、すぐ近くにある待合室のベンチに座って無事に戻ってくるのを待つ。
正直、心配で落ち着かなかった。
「お母さんは絶対大丈夫だ」
子供たちに対してなのか、それとも自分に対してなのか、言い聞かせるようにそう言ったその時だった。
隣のベンチから「ピロン」という音が聞こえた。
信じられない気持ちでそちらを見ると、祐希がまたゲーム機を握っていた。
「こんな時まで……」
思わず呟いていた。
しかし祐希は、音は消したものの、手を止めようとはしない。
俺はもう呆気に取られてしまって、注意する気にもなれず、黙って息を吐いた。
どうせ手術は何時間にも及ぶ。待っている間、他にやることも無いのだ。
そう思って放っておいた。
祐希は二時間以上、一時の休憩も取らずにゲームを続けた。
しかし、いよいよ知らされていた手術時間も終わろうという頃だった。
俄かに手術室の前が慌ただしくなった。
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