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「何かあったんですか」
俺は看護師の一人を捕まえ、尋ねる。
しかし看護師は「こちらでお待ち下さい」と言うだけで、詳しいことは何も教えてくれなかった。
心臓の鼓動が破裂しそうなほど大きくなる。
最悪な想像が頭を過ぎる。
それでも俺は父親だから、冷静でいなければと思った。
そんな俺の耳に、カタカタという音が響いた。
「よしっ」
「行けっ」
手術室でも俺や里緒のほうでもなく、ゲーム機の画面だけをじっと見ながら、祐希はボタンを押し続けている。
母親に何かあったのかもしれない、この状況になってさえ。
俺は我慢の限界に達した。
「やめろと言ってるだろ!」
そう怒鳴って、祐希に近付くと、手に持っていたゲーム機を払い落した。
「何するんだよ!もう少しだったのに」
カラン、という音がして床へと落ちたゲーム機を数秒見つめた後、祐希は怒鳴り返した。
「お前こそ何してるんだ、こんな時に!お母さん、命に関わるような手術してるんだぞ。お前はお母さんのことどうでもいいのか」
そう責めた。
祐希は俺の目を強く睨むが、何も答えない。
暫く、俺たちの間には張り詰めた空気が流れた。
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