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花先生は結婚をしなかった。
だから、身寄りも少なかった。
その一生を音楽と教育に捧げたのだ。
先生にお線香だけでもあげたくて、親戚の方に連絡を取ってみたが、「そういうのはご遠慮させていただいております」と返されてしまった。
親族でもなんでもない自分が、それ以上求めることはできなかった。
でも、私は何かがしたかった。
そこで、私は花先生への手紙を燃やすことにした。思いだけでも空に飛ばしたかったのだ。
「……よしっ」
手紙に火をつけると、煙が上へ上へ登っていった。
先生のもとまで届きますように。
私は手を合わせた。
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