76食目 ストーカー

2/7
1382人が本棚に入れています
本棚に追加
/888ページ
「じゃあ密、私買い物行ってくるけどなるべく早く帰ってくるから大人しく寝ておくのよ? 将軍、密のことお願いね」 分かったと言わんばかりに密の隣に寝そべる将軍、当の密はというといつも白い頬が真っ赤に染まり顔をしかめ咳をしながらも頷いた。 本日の密は、珍しく風邪をひいて寝込んでいる。 いつも早起きの密が起きてこなくて、おかしいなー?なんて思って密の部屋を覗けば、トロンとした目の密がノロノロ着替えていてもしかしてと思い体温を測れば高熱が出ていたのだ。 そこからすぐさま密をベッドに押し戻して、近くで仕事をしながらあれやこれやと看病していたのだけれど午後4時半現在密の熱はまだ下がっていない。 これは徹夜で看病コースだなと思いながらも、冷蔵庫を開ければ食料があまりなくて後ろ髪をひかれつつも買い物に行くことになったのである。 一応念のためにと、鍵もしっかり施錠しつついつもなら徒歩で行くスーパーも今日は早く帰れるように車で向かった。 手早く買い物を済ませ、早く帰ろうと車を走らせているとちょうど道の端を中学生が歩いていてもう下校なんだーなんて思いながら通りすぎた瞬間、私は思わず車を停めて窓を開けた。 「翼くん?」 「あ、密ちゃんのお姉さん」 こんにちはなんて挨拶してくれたのは、密の彼氏の翼くん。 この前は水族館のチケットありがとうございましたとお礼を言ってくれる翼くんに、デート楽しかったー?なんてからかっていると妙に翼くんの顔色が悪いことに気づいた。 「あれ?翼くんも風邪?」 「いえ、風邪ってわけじゃないんですけど………」 その、と何故か後ろを気にしながら言いづらそうな感じを出す翼くんにとりあえず乗りな、と助手席のドアを開けて座席に座らせ車を走らせる。 その後やっぱり後ろを気にする翼くんにどうしたの?なんて聞けば、翼くんは実は………と少し小さな声で教えてくれた。 「全然違うクラスの子に告白されて断った日からずっと登下校の時に着けられてて………」 「え!?ストーカーじゃん、怖っ!」 翼くん曰く、ずっと見てきたり下駄箱に大量の手紙が入っていたりもしていたんだとか………。 中学生のストーカーって怖いなと思いつつ、今回の怪談はストーカーをテーマにしようと決めた私は、お礼の代わりに翼くんをしっかり家まで送り届けたのだった。
/888ページ

最初のコメントを投稿しよう!