眞野亜也夏1

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「あたしのママは、TV局で働いているの。 ここに映っている人達は、みんなお店のオーナー! グルメ番組で紹介していいか交渉していたの!」  男子達の顔が、青くなった。柳瀬さんがどんな顔をしているのか見えない。  もっとだ。もっと言ってやらないと、この怒りは治まらない。 「数日前から、ママが外出しているとスマホカメラのシャッター音が聞こえたり、夜遅い時間にお店の前で子どもがうろついたりしていたんだって」  佐山光里達は、あたしの言葉にびくっと体を震わせた。でも、彼らの奥にいる柳瀬さんは、一向に動く気配がない。泣き声も聞こえてこない。 「黙って人をつけ回して写真を撮るなんて、ストーカーじゃん」 「しかも不倫とか酷い妄想までして」 「美晴も愛也夏も、可哀想」  女子達の言葉に、佐山光里達は俯いた。柳瀬さんは、彼らと同じように下を向いた。  ―――謝ってよ。  そう言いたかった。でも、言わない。 「ママに伝えるから。先生にも」  あたしはみんなを引き連れ、その場から離れた。  美晴が、こそっと聞いてきた。 「いいの? 謝ってもらわなくって」 「ここで言ったら、あの子、あたしに命令されたって思うだけだよ」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!