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「あたしのママは、TV局で働いているの。
ここに映っている人達は、みんなお店のオーナー! グルメ番組で紹介していいか交渉していたの!」
男子達の顔が、青くなった。柳瀬さんがどんな顔をしているのか見えない。
もっとだ。もっと言ってやらないと、この怒りは治まらない。
「数日前から、ママが外出しているとスマホカメラのシャッター音が聞こえたり、夜遅い時間にお店の前で子どもがうろついたりしていたんだって」
佐山光里達は、あたしの言葉にびくっと体を震わせた。でも、彼らの奥にいる柳瀬さんは、一向に動く気配がない。泣き声も聞こえてこない。
「黙って人をつけ回して写真を撮るなんて、ストーカーじゃん」
「しかも不倫とか酷い妄想までして」
「美晴も愛也夏も、可哀想」
女子達の言葉に、佐山光里達は俯いた。柳瀬さんは、彼らと同じように下を向いた。
―――謝ってよ。
そう言いたかった。でも、言わない。
「ママに伝えるから。先生にも」
あたしはみんなを引き連れ、その場から離れた。
美晴が、こそっと聞いてきた。
「いいの? 謝ってもらわなくって」
「ここで言ったら、あの子、あたしに命令されたって思うだけだよ」
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