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プロローグ
放課後。
ウサギ小屋の前で、わたし、柳瀬茉愛はドキドキしていた。何度も何度も深呼吸を繰り返す。
ウサギ小屋から離れた大きな遊具。
わたしがそこを見たら、きっと、隠れているみんなは顔を出す。いつも明るい光里くんや大人っぽい玲人くん、それから、子熊みたいな丸顔の鴇田くん。
「大丈夫だよ」て、彼らが笑いかけてくれたら、わたしは勇気が出る。
そしたら、5年1組の女子を仕切っている眞野亜也夏が来ても、大丈夫だ。ちゃんと、言わなきゃいけないことも言える。
でも、今、わたしは光里くん達がいる方を見れない。
もしも、わたしが男子からエールをもらっているところを眞野さんが見たら、嫉妬されて、説得どころじゃなくなっちゃう。
だから、わたしは自分で自分を奮い立たせるしかない。
ぎゅうっと拳を握って、胸の前に引き寄せる。光里くんが、サッカーの試合前にしていると言っていた、緊張をほぐす方法。
それから「大丈夫」と小さく自分に言い聞かせた。自信を持つ自己暗示だって、玲人くんが教えてくれた。
最後に、目をぎゅっと閉じて、もう一度深呼吸。
じゃり。
後ろから、足音が聞こえた。
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