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もちろん私はとっさに目を逸し、
今にも爆発しそうなくらいドキドキと
早鐘を打ち始めた胸の鼓動を鎮めるよう、
手に持ったグラスに半分ほど残ってたジュースを
一気飲みして、傍らへ立っている幼なじみの
鮫島祐太朗に尋ねた。
「――ね、ねぇ、あっちで連合の人らと一緒におる
モデルみたいな恰好ええ人誰だか知っとる?」
「も~うっ、かずってばイケずぅ」
「はぁっ??」
「オレってイケメンがこんな近くへおるのに
他の男に目ぇつけとるわけぇ?」
「あ、べ、別にそんなんやないけど――ってか、祐っ!
紛らわしい表現せんといて。これだから、私ら
”デキとる”なんて噂たてられるんやわ」
「オレとしちゃあ、それでかずに妙なムシが
付かんようになるさかいごっつ嬉しいけど?」
私は醒めた目で祐太朗を凝視した。
「アハハハ~……冗談やて、そない怒るなや。あぁ、
あのおっさんな、完治の幼なじみらしい。そんでもって、
警察庁のお偉いさんやて」
「へぇ~、そんなお偉いさんが、どうしてまたこんな
パーティーに来たんやろ……」
「けどほんま、憎ったらしいくらいええ男やな。
女も放っておかんやろに」
「同感」
と言っていたその人が、まさか自分の新たな上司に
なろうとは、この時は知る由もなかった。
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