ヒナノクチバシ

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ヒナノクチバシ

もうもうとたちこめる 温かくて湿り気を帯びた空気。 ちょっぴり鼻を突く臭いがあるけれど、 この銭湯がヒナは大好きだった。 「こんにちはヒナちゃん、 今日もお手伝いかい?偉いねぇ」 番台に座る少女の目の前に お金を置いてそう言う老婆は にこりと笑んだヒナの頭を 愛おしそうに撫でてくれた。 優しい笑顔の老婆は、 ニシのオバサンと呼ばれている。 ニシ、というのは屋号だそうで、 ここら辺には 同じ姓が多い事から出来た 独自の風習だと教えて貰った。
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