死にゆくものは

2/8
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 不慮の事故だった。不慮ではない事故なんてないのだろうが、本当にある日突然、あなたは帰らぬ人となった。だけど、あなたの死を、そんな一言で終わらせてほしくない。  「判決、加害者は・・・」  裁判官の淡々とした声が、響く。絵梨は、その言葉を理解するのにさえ時間がかかる。過失運転致死、執行猶予、罰金、慰謝料。日常生活ではあまり聞きなれない言葉が、呼応する。  あの女は殺されないの?理解よりも先に、疑問が浮かぶ。  自動車事故で死刑。あまりに突飛な話だが、絵梨にはもはや、そう考える余裕はない。  静かな空間に、喚き声が響いた。うるさい、うるさい、どうして。絵梨は耳をふさぐ。それでも声は消えない。そうして初めて、その声が自分の発している声だと気づいた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!