エピローグ

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今までいた夢の世界が、長年住み着いた家だとしたら、新しい夢の世界は、今まで住んでいたところと比べたら環境も違うし、家も真新しくて、まだ住み慣れない。 でも、少しずつ慣れていった。慣れて、知るに従って、私の以前からの夢の世界がさらに彩りに溢れ、広がってくるのが分かる。 ただ童話やお伽話だけで夢を見ていた私・・・その物語達の裏で現実世界でどんな事があったのか・・・それらは私にとって、初めて知る世界だった。 現実世界であった事なんか、童話や物語と比べたら、真っ黒い影やどろどろした出来事、現実臭が強くて夢の世界とは程遠い。でも、それらの出来事すべてが、私の夢の世界に真実味と立体感を与え始めていた。 今日も朝から彼の部屋に入り浸り、新しい夢の世界に浸り続け、夢中になり、それが落ち着く頃、私は大きく息をついて、現実世界に戻った。 時計を見ると、本を開いてから数時間過ぎていた。 気がつくと、床に置いていたカフェオレが空になっていた。私はマグカップを片手に立ち上がり、台所へ行った。 「聖也君、コーヒー淹れるけど飲む?」 「ありがとう、貰う」 そして、仕事中の久保さん・・・聖也君に、ブラックコーヒーを淹れ、私用にカフェオレを淹れた。 「あ、沙織」
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