Hiroko's story

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「ねえねえ、ヒロちゃん見て見て。彼に編んだセーターできたんだけど、いい色でしょ?」 ここは、2年5組の教室。 お昼のお弁当を食べて、中学の頃からの友達、園田(そのだ)千佐子(ちさこ)が、何かゴソゴソしていると思ったら、バッグの中から彼氏へのプレゼントだと言う手編みのセーターを出してきた。 チィちゃんの両腕に乗ったそれは、何とも吸い込まれそうな、深緑色をしている。 「そうだね。私もこの色好きだよ。あぁそっか、もうすぐクリスマスだね」 周りはすごく盛り上がっているというのに、私は全然関心が無かった。 「ヒロちゃんは飯星くんと過ごす予定なの?」 私は苦笑いしながら顔を横に振った。 「チィちゃん、話したと思うんだけどね。私、この前振られたばっかりだから、フリーなの。クリスマスは……たぶん家族でチキンとケーキを食べるぐらいかな」 「そうだった……ゴメンっ」 チィちゃんはセーターを膝に置いて、手を合わせ下顔を下げた。 「別にいいよ~。もうとっくに吹っ切れてるし」 チィちゃんには大学生の彼氏がいる。 二つ上のお兄さんの同級生で、彼がよく家に遊びに来るようになり仲良くなったらしい。 すごく幸せそうでいいな……
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