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「三浦さん、これはお返しします」
三浦さんはゆっくりと私に視線を合わせると、ストールを受け取った。
愛した海を背に、彼が描いた私が決して手の届かない空へ向かって全身で愛を叫んでいる。
その絵の前で、私は彼へ最後の言葉を告げた。
「あなたとの時間は、私にとってかけがえのないものでした。……今までありがとう」
悲しくて流す涙を、彼には二度と見せたくない。
そう思った私は、彼が言葉を発する前に、足早にアトリエから立ち去った。
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