菩薩みち。

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だが、どく気も無い沖田が、さらに身を寄せ。斎藤を閉じ込める。 「頼む、機嫌直せ」 昨日からそんな言葉を繰り返す沖田の、肩ごし。斎藤がちらりと 周囲を見渡せば、 ・・・当然だが、道場の一角に発生した場違いな光景に慄いて、 居合わせた人間がこぞってこちらを見つめていた。 斎藤は周囲の視線から、げっそりと目をそらす。 「どけ、と言っているのが聞こえないか」 「どいたら、またいつおまえを捕まえることが叶うか」 わからない、だから離せない。 と斎藤の耳元に溜息が落ちた。 「・・・・」 ここがどこであるか。今、なんの最中であるか。にも拘らず、 剣術稽古に関しては人一倍の厳しさをもって取りくむ沖田が、今このザマだ。 ここまで切羽詰るなら、始めから斎藤を怒らせなければいいものを。 「・・・愚か者め」 吐き捨てた斎藤の台詞に。 沖田が追わせるようにしてコツンと額を当てた。 「ごめん」 「本気で謝っているのか」 「ああ。もうしない」 「・・・次は絶対に許さんからな」 わかったら、どけ 再び手を押し遣った斎藤に、 直後、 沖田からの激しい抱擁が返り。 窒息しかけた斎藤を遠く見とめながら、 今日もやれやれと胸を撫で下ろした周囲の人間は、 分かっている。 きっと、すぐに同じ場面を再見するだろう事なんて・・・
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