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あらすじ
ぼんやりとした視界に、太陽の光が差し込んだ。段々とはっきりしてきた頭で、自分が今、埼玉県庁の屋外階段の踊り場にいることを思い出す。
少しだけ息抜きに休むつもりだったのに、どうやら居眠りをしてしまったらしい。暫く徹夜の日々だったからか、まだ頭は重い。
――しまった。居眠りなんてしてる場合じゃないのに。
アヤトは、駆け足で重いドアを開けた。
アヤトを始めとする埼玉県観光推進企画課が忙しいのには理由があった。
「日本を、アジア一の観光大国へ」
このスローガンが掲げられてからというものの、日本は観光産業により力を入れるようになった。加えて、関東観光対策委員会という新しい組織が出来た。そこの出した案というものが、アヤトたちを追い込む要因だった。
――それが、サイタマ統一案だ。
「さらに東京に観光が出来る場を作りたい。しかし、土地がない。では近くにある県、埼玉県を統合し、東京にすればいいのではないか。そうすれば、埼玉ももっと活気づく。両方にとっていいこと尽くしだろう」
関東観光対策委員会委員長・大河原泰造はそう提唱した。
なんの取り柄のない埼玉県をいっそのこと東京にしてしまうことによって得られる、観光客を増やせるなどのメリットに目をつけて委員会が提出したものである。世論は賛成派、反対派、無関心派に別れ、サイタマ県民の意見も分裂するが、調査によると4:4:2の拮抗した割合だった。
埼玉県庁で働く人々はどうにか埼玉県を存続しようと忙しなく動き回っている。
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