猫の気持ち

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 先にお風呂を拝借。のぞみが用意してくれたらしい新品の歯ブラシで歯も磨き終え、やっと着替えを持ってくるの忘れていたことに気が付いた。やむなくバスタオルを腰に巻き、人様の家の中を「申し訳ございませんよ」と裸で歩く。 「お風呂ありがとー」 「うん」  クローゼットに直行して着替えを漁った。その背後にペトッとくっつく気配。 「なにかな? のぞみくん」 「のぶちゃんて……肌すべすべだねぇ」  のぞみの手が背中を撫でてくる。声がウキウキしてる。やっぱりあてにできないじゃないか。 「早く風呂、入ってこいよ」 「もうちょっと触ってた~い」 「男の背中なんて触って何が楽しいんだ。早く行けって」 「えへへ。気持ちいいよ? じゃ入ってくるね。待っててね」  待つことなんてなにもないだろ。のぞみがいなくなったのを確認してせっせとパンツをはいた。これからはちゃんと着替えを用意してから風呂場に行こうと固く心に誓う。  着替えも終え、壁の時計を見れば十一時。  そう言えばのぞみは自炊派だと言ってたな。俺は台所へ向かい食パンとか朝ご飯になりそうなものを探した。棚には食パンとコーンスープの元。牛乳をかけて食べるコーンフレーク。冷蔵庫にはいろんな銘柄のビールのほかに、赤味噌、白味噌、ピーナッツバターとイチゴジャム。牛乳一リットル、玉子も一パック。チルドの引き出しには豚肉や鶏もも肉もある。野菜室には玉ねぎとキャベツともやし。十分だな。充実しすぎなくらいだ。さすが自炊派。まぁ、朝だし。ご飯を炊く必要もないだろ。  のぞみの通勤時間は三十分。八時半には出るだろうし俺は七時半でいいか。携帯のアラームをセットして、あとはする事もないから先に休ませてもらおうとベッドに潜り込んだ。
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