猫の気持ち

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「ところで、彼女を……まぁ、彼氏かも知らんが、家に連れ込みたい時は事前連絡頼む。一泊ぐらいどっかで適当にしのぐから。気にせず言ってくれ」 「のぶちゃん、俺二股とかしないから。そんな心配しなくて大丈夫だからね」  サラリと言ってのぞみは風呂場へ行った。 「俺、風呂洗うから、のぶちゃん洗濯機回してよ。洗うもんあったら入れてー」 「……うん……」  缶の中のビールを飲みほし、黒い缶の飲み口を見つめた。 ……なんだ? なんで俺、今ちょっと虚しくなってるんだ?   妙な感覚に首を捻りながら、食べ終わったピザと空き缶を片付けコタツを拭いた。そのまま脱衣所に向かう。靴下と着ていた服、パンツを洗濯機へ入れてそばにあったタオルを腰に巻いた。言われた通り洗濯機を回しに来たわけだけど、これって風呂から出た後に回すべきじゃないのか? と思いながら洗剤と柔軟剤をセットした。横の風呂場を見れば、掃除中ののぞみのシルエットがぼんやり、磨ガラスの向こうに見えている。  二股……二股? そのうちの一人は誰のことだ? よもや俺のことを指してないよな。さっきから好きとかいろいろ言ったりやったりしてくるけど、なんだかんだ冗談だろうし。あのマジ顔のだって、人間としての好意だと俺は受け取りたい。こんなふうに思うのは俺の悪あがきなんだろうか。  風呂から出るなりのぞみは目を丸くして俺を見ていた。 「のぶちゃん今着てる服まで洗濯しなくても良かったのに。寒くない?」 「うん、そんなに。だってのぞみが洗うものだせって言っただろ」 「あー。あはは。そうだね。風呂出てからでも良かったね。もう入れるから、先に入りなよ。お湯溜まってるし」 「なんか悪いな。待ち構えてたみたいで。じゃ遠慮なく」
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