4人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
増長ストロングスタイル
「ねぇ、いつものトレーニングは終わったんでしょう? そこでそうしているなら、子供たちを風呂にでも入れて来てちょうだいよ」
トントントンと、対面式キッチンの向こうから、妻の小雪が、まな板で何かを刻みながら私に向かって言葉を投げてきた。
「今、いい所なんだよ」
私といえばテレビの前のソファに身体を投げ出している。生中継のテレビに釘付けだった。
湯気にまみれて、忙しそうにしている小雪を他所に、プロテインを飲んでいた。
小雪にしてみたら、その態度が気に入らないのだろうが、大の格闘マニアで、年末恒例の格闘技番組を一年の集大成として捉えている私は、リアルタイムで見ることを譲れなかった。否、どうしても譲りたくはなかった。
「最近になってトレーニングしだしたのは、その番組の影響なのね。とにかく子供たちの相手をしてやって、ここに居られると邪魔だし危険なのよ」
小雪は言った。
どう見ても機嫌の悪い顔つきが、私にプレッシャーをかけている。
最初のコメントを投稿しよう!