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「タツマキ将軍とフブキ将軍がお戻りになられました」
報告を受けたトウマは国王の間へ移動した。
「そこで一礼をして……ああ、違いますぞ! もう一度やり直しです」
国王の間を覗くと、教育係に就任したセキがレナを指導している。
「おお、トウマ殿。加冠の儀まで時間が無いので、レナ様の教育を急いでいました。加冠の儀は国王に就任する大切な儀式です。手は抜きませぬぞ」
「セキさん、根を詰めると却って逆効果です。少し休まれては?」
「ふむ、そうですか。では、本日はここまでとしましょう」
セキが姿を消すと、レナは深いため息を吐いた。
「有難う御座います。セキさんの教育が、ここまで厳しいとは思いませんでした」
「相当お疲れですね。宜しければ、気晴らしに出掛けませんか?」
疲れ切った顔に精気が戻り、瞳が輝く。
イツキとの決戦前に、トウマから大事な話があると聞いている。
レナの鼓動は一気に加速した。
「行きます!」
「外に馬を用意してあります。では、行きましょう」
雲一つ無い透き通る青空の下、レナを乗せた白馬が駆けて行く。トウマにしがみつき、いつしか疲れも忘れてしまった。
気持ちの良い風が髪を撫で、辺りを見渡すと一片の花びらが舞い踊っている。
「もしかして、桜の森ですか?」
「気付かれましたか。やはり、レナ様には軍師の素質がありますよ。常に状況を把握し、想定される未来を導き出して……」
トウマなりに笑わせようとしているのだろうか? 全く笑えない。
「……なんてね。ハハッ」
やはり笑わせようとしていた。振り返って見せる笑顔が可愛くて、声を出せずに頬が赤く染まる。
「着きましたよ」
見上げると、鮮やかな桃色の桜がレナを出迎えていた。
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