鏡よ鏡、鏡さん

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「はあい」 美女はてくてくとその細い道を懐中電灯で照らしながら進んでいきます。 「暗いよ恐いよ、ほんとにこんなところにあるの?」 腕時計を見れば二時。いつもは時計なんかつけないけれど仕方がないのです。携帯電話は使えませんから。 「電波時計じゃなくてよかったわ」 だってこんな森の中では電波が届かないんですもの。 20分も歩いたでしょうか。 とうとう彼女の目指すものが見えてきました。 「あ、あれだ!」 目に映るのは小さな小屋。苔が生え今にも崩れそうに見えますが、なかなかどうして。石造りの壁はなかなかハンマーくらいではちょっとやそっとでは無理かもです。 そこだけはこまめに誰かが修理しているのでしょう。 真新しい鋲が打たれた木のドアがどっかあんと存在感を出しています。 「よっと。きっとこれを叩くのね」 ドアの横の木の板を、同じく木のハンマーで、かんかん。 しーーーん ガンガン。 しーーーん 「うおりゃあああああああああ」 『やっかましい!』 「………。いるじゃん。こんちわー」 ぎいい。 ドアを押し開け中に入りますと。 屋根はあるような無いような。 割れて腐った木の板の隙間から森をすり抜けて入ってきた木漏れ日が緩く差し込んでいます。     
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