第1章 はじめての告白

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「じゃ、じゃ、じゃあ!帰ろ!一緒に帰ろ!」 藤ケ谷くんの声はなんだか裏返っていた。 藤ケ谷くんが自転車を押す。長い体を折り曲げて。窮屈そうだ。 「藤ケ谷くん、乗っていいよ」 「え?」 藤ケ谷くんが私を振り返る。例のまん丸でかわいい目をした。 「じゃ、じゃあ! 後ろ乗る?」 「…え?」 藤ケ谷くんが自転車をまたぐ。そして座席をペンペンした。 「乗って」 「…」 (ま…またぐのかな…横座り?) いつも女の子の友達のアッキーとは、またぐし、背中に手を回すけど。 (え、どこにつかまるの?) 座ったら藤ケ谷くんが振り返った。 「落っこちちゃうよ」 「あ」 藤ケ谷くんの手が私の手を取る。 私は藤ケ谷くんにしがみつく格好になった。 「わわわ」 藤ケ谷くんが真っ赤になる。背中にぴったりと張り付いてしまった私も真っ赤になった。 藤ケ谷くんはよろよろと走り出した。 「わ、私、お…重い?」 「まさか。安全運転!」 藤ケ谷くんの声がうわずる。 「北山さん、乗ってるから!」 後ろから見たら、耳も首も真っ赤だ。 (ひゃあああああ) 駅にはあっという間についてしまった。 「…」 「…」 駅前のロータリーで固まる二人。 「今度さ」 藤ケ谷くんが言った。 「どっかいかない?」 「?」 「あと」 小さい声でつぶやき、携帯を出してきた。 「メアドとか……いろいろ教えて」 大きな体を少し丸める藤ケ谷くん。 私を見る目が潤んでて、きらきらしてる。 (この人、こんなに私のこと好きなんだ) そう思うと不思議な気がした。 私は今日初めて会ったのに。 藤ケ谷くんは私をずっと好きだったと言う。 私は携帯を差し出した。 いろんな連絡を交換する。完了の音がした時、藤ケ谷くんが嬉しそうな顔をした。 (こんなに喜んでくれるなんて) 告白をオーケーして良かったな、と私は思った。
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