「お年玉の使い道」

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「お年玉の使い道」

 ーーようやくだ、ようやく溜まった。    手元に揃ったポチ袋から顔を覗かせているのは野口秀雄や樋口一葉、真打ち登場とばかりに最後に開封した袋からは福沢諭吉が意味ありげにこちらを見つめていた。  金額にしてみればそう高くもない。少しずつ貯めたお小遣いと合わせても最新型のゲーム機が買えてもソフトは買えない。そんな金額だ。しかし僕の身においてはその金額のもたらす意味はとても大きい。 「おかーさーん、ちょっと出かけてくるー」 「今日は早く帰ってくるのよー」 「分ってるー」  新年二日目。友達からの誘いも断って向かったのは近所の寂れた神社だった。  元々は地域の人たちに信仰されてお正月ともなれば賑わっていたらしいのだけど、悲しいかな。少子化高齢化の影響は僕の村にも訪れているようで、新年のご挨拶にこそ足を運べと出店を出すような人はもういなくなっていた。  隣町に大きな神社があるって言うのも影響しているのだろうけど、年末の大掃除もそこそこに済まされた本殿は年季を隠しきれてはいない。 「まさか二日連続で来ることになるとは思わなかったけどさぁ……」  別名心臓ゴロシと呼ばれる石階段を登りきる頃にはすっかり体も温まっていた。     
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