第四章「信頼」

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第四章「信頼」

アーネットはウィリアム伯爵の助けもあって、内密にではあるが、王家から保護されることになった。王宮に住むことはできないが、帝都ロンドンの中流家庭の娘として生活する保障をされたのだ。とはいえ王室にとってはアーネットの存在は絶対に秘密にしたいところなので、大富豪ではなく、街の裕福層といった感じの葡萄酒商(ワインの製造・販売)を経営するホワイトダウンズ家に預けられることになる。 アーネットの養父になる夫妻には、アーネットのことは、さる没落貴族の子としか説明されていないのだが、それでも一生涯の生活費として振り込まれた金額をみて、この子はただならぬ存在なのだろうことは予測された。だが、それらを詮索しないことも暗黙の了解である。つとめて夫妻はアーネットに自然な感じで接しようとしてくれた。 この夫妻には二人の男児がいて、3歳と7歳で、丁度アーネットが5歳と二人の中間に位置し、3兄弟に見える。だが長男からすると急に現れた彼女に違和感を隠し切れない、両親も彼女のことを気遣い、何かと彼女の心配をするのが面白くない。義兄はアーネットに対し反抗的な態度をとってしまう。 「お前の髪はなんでそんなに真っ白なんだよ」     
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