長すぎた春の真実は

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高校を卒業してすぐに関西に移った私には土地勘がない。 地下鉄の駅を通り過ぎてしばらくすると、自分たちがどこにいるのかわからなくなった。 それでも後戻りしようとは思わない。 華やかなネオンを嫌うように歩いていた遼太郎が足を止め、私を振り返った。 付いてくるなと言われることを覚悟して、彼を見上げる。 けれど彼は拒絶しなかった。 疲れたような目が私を見下ろす。 「一杯付き合え」 そう言うと、遼太郎は雑踏から私を庇うように腕を掴んで歩き始めた。 さっきよりも緩くなった彼の歩調に寄り添いながら、私は自分の歩く道が苦しみへと続いていることを予感していた。
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