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初めて見る寝顔だった。
乱れた前髪が額にかかり、男らしい顔立ちは無防備な表情でぐっすり眠っている。
きっと、この寝顔を見るのは最初で最後になるのだろう。
目を覚ませば、遼太郎は後悔するはずだ。
窓の外ががすっかり白む頃、私はそっと身体を起こした。
できればもっと見つめていたかったけれど、遼太郎が目を覚ます前に立ち去りたかった。
面と向かって拒絶されるのが怖かったからだ。
まだ、会社で冷たく無視する態度で示してもらう方が傷は浅くて済む。
そう思ってベッドを抜け出そうとしたときだった。
不意に遼太郎が目を開けた。
まもなく彼の目の焦点が合い、それが私の顔に定まったとき、私は厳しい言葉を投げられるのを覚悟した。
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