第0話 食卓

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第0話 食卓

 薄暗いガレージの中、金属製の檻、手製の捕獲器の中で、一匹の茶と白の毛並みをした野良猫がぐったりと横たわっていた。  捕まえた直後は丸々と太っていたが、今はやせ細り、毛の艶もすっかり失わている。  それも当然かもしれない。四日前、家の裏にある空き地に置いておいた捕獲器で捕えてから、水しか与えていなかったのだから。  今回の猫は初めての餓死に挑戦しようと思っていたのだが、意外としぶとい。今となってはひどく弱弱しいが、それでも時折その喉から漏れる鳴き声は大きく、助けを求めようとしているかのようだった。  このまま置いておくと、俺の家から猫の鳴き声がすると噂が立ってしまうかもしれない。そこで、残念だがこいつは餓死を待たずに今日殺すことにした。だが、その前に少し思いがけない収穫があったので、ちょっとした実験を試してみることにする。  俺は捕獲器に近づくと、その扉を開けた。自由への道が開かれても、白茶の猫は身を横たえたままか細い呼吸を繰り返している。どうやら逃げ出す体力もないらしい。     
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